10月 3日七十二候 水始涸(みずはじめてかるる)

稲穂と空 暦・季節

 

 
今日は七十二候の水始涸
(みずはじめてかるる)にあたります。

そうですね もう田んぼからは とっくに水を抜いて
ぬからないように乾かさないといけない時期です。

水の都合は人の思いとは裏腹に…
ところが乾いてほしい時期には 台風や
秋の長雨などで稲が倒れたり
いつまでも水が引かないなど
困ることも多く起こるのが現実です。

稲は穂が実って下を向く頃には
もう水は必要なくなります。

苗のころから稲全体が緑色をしている盛夏までは
水の量を朝夕に加減しながら
世話をしなければなりませんが
必要がなくなると 共同の取水口から
止めてしまいます。

乾燥して冷たくなり始めた風に
稲が揺れる姿もまた
風情があるものですね。
 

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水を切った田んぼはどんどん乾いていく

 
黄色く色づき 重くなった穂を揺らしていく
風のことを「野分(のわけ)」
なんて呼んだりします。

というか本当は台風の強風ことなので
黄金色の田んぼには 吹いて
ほしくないのですけれど。(;^▽^A゛

荒れ狂う強風にさえ風情のある名前を
つけてしまう日本語とそれを操る
日本人の感性が大好きなのです。

田んぼの土もよく乾いて
ひび割れが入るほどです。

昔…といっても戦前までですが
田植え同様稲刈りも近所が
手を貸し合っての共同作業が主でした。

手植えをした苗が成長して それを全て
手作業で刈り取り わらで束にして
ハゼまたはハサと呼ぶ棒にかけて干します。

刈り取るタイミングも ハゼにかけて干す時間も
毎年少しずつ違いますが それは
台風の襲来や雨の降り方などを
見計らっての「読み」になるのです。

自然が相手ですからマニュアルはありませんし
それこそ稲のことは稲に聞けとばかりに
毎日観察を続けるしかありません。

だからこそその集積が七十二候や
雑節などとして定着してきているのだと思います。

田んぼから水が本当に涸れてしまう直前には
こんな少ない水に卵を産み落として
大丈夫なのかな…と思うほどの
小さな水溜りなどに トンボさんが
産卵する姿を見かけます。

卵は強いですから 何とかなるのかもしれません。
もしかすると水があるうちに
柔らかい土の中へもぐって
いくのかもしれないですね。

水の枯れた田んぼには思い出があります。

田んぼの水を抜き 土が乾き始めると
独特の土の香りがします。

知っていないとわからないくらいの
ほのかな香りですが
私は嫌いではありません。

あえて香りと書いたのは 匂いだと何だか
くさいような印象があるためで
私の感覚だとやっぱり香りなのです。

実は田んぼの泥というのは
とても細かくて適度に粘りもあって
「どろだんご」を作るのに最適なんですよねえ。

子供のころは この田んぼの泥を丸めて
よくどろだんごを作りました。

表面を滑らかな泥で覆って 歪みのない
きれいな球にしたくて いくつもいくつも
ものすごく真剣に丸めました。

でも乾くとひびが入ったり歪みが出たりして
とても悲しかったです。
 
 

水との上手な付き合い方でもある

 
日本の水田は限りある水を有効に使いながら
かつ相当に効果的な治水になっていると
聞いたことがあります。

雨の降り方にもよりますが 降った雨が
一気に河川に集まらず 水田で一旦保水され
ゆっくりと流れてくるので
治水に役立っているといわれます。

農作物は稲ばかりではありませんが
全部畑にすることなくあぜを作り
用水路をめぐらせて水を行き渡らせる農法は
作るのに人手と時間がかかりますが
一旦出来てしまえば 水の管理だけで済むし
治水にも役立つ方法だったんですね。

試行錯誤の末 それぞれの地に
最も適した方法が生まれ
定着してきたのだろうと思われます。

そこに人類の安定した食糧生産への
あくなき挑戦をみることができます。

今は農機具が発達しましたので
収穫は本当にあっという間の作業に
なりましたが 手間がかかっても
あえて昔ながらの方法を
取る人たちもたくさんいます。

収穫されるお米の味にこだわる人たちは
手間のかかる昔ながらの方法
ハゼなどで自然に乾燥させたお米は
味が違うことを知っているので…。

農家の人は自分で苦労して収穫するからこそ
本当に美味しいごはんを
食べることができるのでしょうね。

私自身がスーパーやお米屋さんなどに
流通するものとは 全然味が違うと知ったのは
だいぶ大人になってからのことでしたが…。

田んぼの水がなくなる頃は
来る稲刈りの日取りなどに話題が
集中したことが 懐かしく思い出されるのです。
 
お読みいただきまして ありがとうございました。
 

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