七十二候 蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)

蚕起食桑

 

今日は七十二候の 蚕起食桑
(かいこおきてくわをはむ)にあたります。

ひええ…個人的には 取り上げたくな…い。

虫さんの中でも イモムシ姿の虫さんは
特に苦手で 考えたくない…。

七十二候に入れられたのは とてもよく
わかるつもりでいます。

養蚕は大変盛んに行われてきました。
農家にとっては数少ない現金収入につながり
人々の暮らしに役立つ産業だったのです。

まゆを売るだけでなく 自分たちで
絹織物に仕立てて 晴れ着などを用意するのが
当たり前でしたから。

それはよくわかっているのですが…。

あの美しい正絹の着物たちが この虫さんから
できていると思いたくない…。

でも「蚕だけが絹を吐く」と言われるように
他の虫さんでは ダメなんですよね。
 

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養蚕農家では下へも置かない扱いだった

絹を吐いてくれるお蚕さんは 本当に
さんづけや さまをつけるなどして
呼ばれていました。

人間の自分の子供よりも上の扱いですよ。

風通しのいい蚕室を用意して 家族総出で
甲斐甲斐しく世話をしました。

昔ですし 虫さんですから いろいろと
大変だったと思います。

ちょっと意外だったのは 蚕室には
ねこさんが鎮座していたそうです。

というのも 大きくなってきたお蚕さんを
ねずみが狙うんですって。

世話をして飼っている虫さんですから
丸まると太っているし わんさといるし
ねずみさんも これはいい餌場だわあと
思ったに違いありません。

だからねこさんが番をしていたのです。

お蚕さんは何度か 桑の葉を食べるのをやめて
じっと動かなくなる時期があるそうです。

この七十二候の蚕起食桑の辺りも
その休眠状態から覚醒して またわしわしと
食べ始める時期のようです。

本格的な暑さを前に 過し易い時ですから
もりもり食べて大きく(ひええ)なるんです。

実際に養蚕をしたことのある人の話では
夜 寝静まると わっしわっしとお蚕さんたちが
桑の葉を食べる音が聞こえたそうです。

お蚕さんは24時間営業だったみたいですね。

生き物ですから 手がかかりますけれども
お蚕さんの場合は わりと早く仕上がるというか

うちのような寒冷地でも1年に2回 まゆとして
売ることができたのだそうです。

手がかかるとは言っても 比較的短期間で
現金収入につながっていたので やり甲斐も
見返りもどちらもよかったのでしょう。

生き物の持つ力を借りた知恵と工夫だなと思います。

 

七十二候に乗せるほど 当たり前だった

養蚕をやっている家では 大抵桑畑もありました。

桑というのは強いですし幹の部分を短くして
互い違いに葉っぱが出る枝を丸ごと切ってきて
お蚕さんに与えました。

もちろん幼虫になった最初の頃は 丁寧に
葉っぱだけを取ってきて与えたそうです。

当然ですが お蚕さんの成長とともに
桑の葉っぱも 大きく厚いものになります。

畑が家と近ければいいのですが
結構な重労働だったと思います。

1本や2本ではありませんし 成長してくると
朝と夕方に与えるようになったそうで
とんでもない食欲だったみたい。

山も畑も緑に染まる新緑のころでしたが
そんなもの眺めている暇はありませんでした。

周りのあらゆるものに命の輝きがあふれる
一番きれいな時なのにねえ。

そういう時期だからこそ お蚕さんも元気に
わさわさ大きく育つのでしょうけれど。

野良仕事と一緒で 根気のいることだし
生き物なので 区切りがつくまでは
休むこともできなかったでしょう。

それでも 家族の誰よりも大切に扱われて
まゆを作り始めたら ようやく一区切り。
すべては虫さんにゆだねられるんです。

この時のために 大切にしてきたんですけど。
虫さんが大きいので まゆも大きいですよね。

あれが全部1本の糸でできてるとか ちょっと
にわかには信じられませんが 本当です。

七十二候の蚕起食桑からまた時間が経ちますが
まゆを出荷して ようやく作業は終わります。

絹を吐く虫 お蚕さんは大切に育てられ
その労力に報いるように 美しい絹を吐きます。

本当によくこんな虫さんを見つけたものだと
いつも感心しています。

 
お読みいただきまして ありがとうございました。

 

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